世界一長い歴史を誇るインドアカーショー「グランドナショナルロードスターショー」
アメリカズ・モースト・ビューティフル・ロードスター(AMBR)賞のノミネート車を筆頭に、全米屈指のショーカーがポモナに集結したので、レポートしよう!
アメリカのカーカルチャーの殿堂にして金字塔
GRAND NATIONAL ROADSTER SHOW 2018 JANUARY 26-28 Pomona,CA
ロッド&カスタムにおける世界一の栄冠を競い合うミスユニバース級の美の祭典が「グランドナショナルロードスターショー」だ。本イベントは、世界一長い歴史を持つインドアカーショーとして知られているが、アメリカズ・モースト・ビューティフル・ロードスター(AMBR)賞のノミネート車を筆頭に、全米屈指のショーカーがポモナに集結したので、レポートしよう!
ロッド&カスタムシーンの最重要イベントに注目せよ!
自動車趣味において最先進国のアメリカでは、ありとあらゆるスタイルでクルマをホビーとして楽しまれている。それに伴ってカーショーやイベントが全米各地で無数に開催されているのもご存知の通り。
中でもパフォーマンスと美しさを極める頂点的存在であるロッド&カスタムは、終戦直後より発展と進化を繰り返し、現在では投入額も億単位にまで高まり、メカニカルアートとも言われ、芸術の域にまで達している。
数あるカーショーの中でも、東海岸ではデトロイトのオートラマ、西海岸では今回フィーチャーする「グランドナショナルロードスターショー(GNRS)」が格式が高い。ミスユニバース同様に世界一の栄冠を競い合う美の祭典であり、ロッド&カスタム界における最重要2大イベントとして世界中が注目しているのだ。
近年では、世代交代のタイミングとも重なり、業界の重鎮達の他界が重なったりと、シーン全体の低迷を懸念する声も聞こえてくるが、出展車両を見る限りそうした要素は一切見受けられない。それまでは指折りのビルダーにしか構築できなかったビッグプロジェクトも、数年も経てばスタンダードになってしまうほど、追従するビルダーが多く、常に進化/成長を続けている。
そこでは新たなトレンドやテクニックが生まれると同時に、定番のスタイルにも一層深みを増している。今回は、西海岸における最重要イベントである、GNRSに出展された車両を通して、そんなロッド&カスタムの奥深い魅力を感じ取ってみよう!
会場は初戦&最終戦が行なわれるNHRAのお膝元、ポモナのフェアプレックス。数あるビルディングはAMBRノミネート車、スエードエリア、マッスルカーとカテゴリーに分かれて展示される。
イベントは金曜日の12時から日曜日の夜まで開催されるが、2018年1/26(金)から28(日)に開催された。期間中は隣接するNHRAミュージアムの入場料が5ドルにディスカウントされたり、近隣のHot Rodショップでのオープンハウスなどと合わせて楽しむことができる。
STREET RODs
アメリカで最も美しいロードスターに贈られるAMBR(America's Most Beautiful Roadster)アワードには、条件をクリアした候補車の中から規定で定められた12台だけがエントリーを許される。しかし、今回は堅実なエントリーが重なったため16台まで枠が広げられることになった。
その分競争率も上がった事で1台は辞退、そのため15台のノミネートで競われることになった。アワードを獲得できるのは1台だけだが、ノミネートされた15台に選出された時点で確実にトップレベルなだけに、どの車両がアワードを穫っても不思議ではなく、その美しさとクオリティの高さは、好みを超えて評価すべき高次元なもの。
あまりにも高次元過ぎる故に、それを評価する側にも高い経験値や知識が要求される程なのだ。また、優れた車両ほど、能ある鷹は爪を隠すという言葉のごとく、アプローチこそ定番的で仕上りは一見すると地味だったりと、その素晴らしさは相当注意深く観察しないと気付けない様なディテーリングに隠されているケースも多い。
情報自体は動画も含めてタイムリーかつイージーに入手可能な現代だからこそ、何はともあれ現車を直にに観るべく会場に足を運び、オーナーやギャラリーのスタンスも含めた、現場のムードも体感してみるのもいいだろう。
“Shangri-La”
AMBRノミネート車である36年型キャデラック・ロードスター。ヘビーロック界の帝王メタリカのジェームス御用達の著名ビルダー、リック・ドリー自身の愛車。社外製の誂えシャシーに、アルミ板を叩いて築き上げた自家製ボディーを搭載した戦前のコーチビルドカー同様のアプローチ。
36年型キャデラックをオマージュしながらも、よりエレガント&スタイリッシュかつコンパクトにまとめたセンスと技術の高さは流石の一言。このレベルのマシンを毎年2台エントリーしているから驚き!
1951 Mercury “Hirohata Marc” Clone"
ボブ・ヒロハタが新車当時に巨匠バリスに依頼して構築した傑作車“ヒロハタマーキュリー”のクローン。マーキュリーおよびレッドスレッドを象徴する存在。数年前に復元されたオリジナルは博物館で拝める。
1928 Ford Model A Sedan
がっつりとチャネリングしてフレームをボディー内に完全に収めたことで、程よくチョップトップしたボディーのシャープさが際立つ秀作。ストックのグリルを活かしたモデルAファン好みの仕立ても◎!
“ILLUSION”
“Shangri-La”と同じくアルミのシートメタルから作り出したリック・ドリーの作品。毎回無塗装の状態でお披露目し、完成後に改めて出展するパターン!
1931 Ford Model A Roadster
15台のノミネートから最終的にAMBRアワードを受賞した31年型フォード・モデルA。アメリカの自動車趣味における超VIPであるブルース・メイヤー氏の古い格言、『ホットロッドに終わりはない』のごとく、この個体は永年に渡り所有される中、これまでに様々なレースに合わせて仕様変更を行なってきた。
ポテンシャルの高さはレースによって証明済みとあって、次なるステージとして美しさを追求しAMBR獲得! 3ウインドー車専用のドアに変更と大技を盛り込みながらも、王道的なアプローチでまとめた玄人受けな仕上り。
1936 Ford Roadster
ヒルボーン社の8スタックインジェクションで武装した50年代のクライスラー392HEMIエンジンの搭載や、MOONタンクの多用、マグネシウムに見立てたホイールのアレンジなど、トラディショナルなメニューを盛り込みながらも、ボディーは全体的に縦方向に切り詰めるなど至る所に手を掛けストックにはないスムースで疾走感のあるフォルムを構築。
製作はネブラスカのメタルマスター、デイル・ボッシュによるもの。スピードと美しさを追求すると同時に、ブレーキには遠視制御ABSを採用するなど、安全面でもアップグレード。
1938 Ford Convertible Sedan
4人乗り4ドア・コンバーチブルの“フェートン”と思いきや、トランク部が突出たデザインのハンプバックセダンにしてオープンの激レアなセダンコンバーチブル! ストックの魅力を活かした秀作。
1960 Ford F250 Crew Cab
60年当時には存在しないクルキャーブに仕立てたうえで、シャシーには06年型F250の4x4を投入。不人気車をベースにここまでのビッグプロジェクトを成し遂げる者がちらほらいるから面白い!
1948 Ford F6 COE Custom Hauler
この時代のCOEはフルサイズトラックとマスクが共通なだけに親しみやすく、HotRodとしてのアレンジも良く似合う。誂えモノと思われるシャシーにチョップトップしたキャビンを載せ、モディファイしたキャデラックのエンジンをミッドにレイアウト。ダンプベッドには同じイメージでカスタムしたチョッパーが搭載されている。
1939 Ford COE
COEのキャビンを活かして独自のピックアップトラックに仕立てたもの。フルサイズトラックよりもショートホイールベースでコンパクトにまとめた佇まいはストックのように自然。一見するとレストロッドとも思える上品でシックな雰囲気ながら、キャビンの下からリアに移設したエンジンは、巨大なルーツブロアーで武装したマッシブな仕様。トラックとしては全く機能しないHot Rodなのがステキ。
1950 Studebaker Champion
エアロダイナミックを駆使したストリームなシルエットが特徴的なチャンピオンは、商業的には成功しなかったが、ホットロッドの世界ではランドスピードレーサーをメインに一定の人気がある。この固体は、僅かなチョップトップに伴いAピラーが傾斜し、よりスタイリッシュなフォルムを獲得。巨大なルーツブロアーで過激にパワーアダーするクライスラーHEMIを搭載。
1957 Chevy 3100
徹底したディテーリングによりレトロフィット的なモダンなルックスを構築。ハイエンドなドイツ車をも凌ぐ極限まで追求した散り合わせの良いボディは、まるで一体整形物のような美しい仕上り。それでいて427ciLS3モーター&T56、6速マニュアルトランスを導入。フルレザーによって仕立てたカスタムインテリアなどマッスルカーにおけるGマシーン的アプローチ。
1929 Ford Model A Roadster
1952年にHOP UPマガジン(ロッド&カスタム専門誌)の表紙を飾ったHOTROD史に名を刻むエディー・ダイのロードスター。65年以上もの歳月を経た個体を完璧にレストアしたもの。クラッシックカーのコンテストにおいて最も権威あるペブルビーチにおいてもHot Rodのカテゴリーが制定されこともあり、往年の有名車の発掘/修復も1つのカテゴオリーとなっている。
1935 Chrysler Airflow C-1 Coupe
チャンピオン同様に、空力特性に特化した革新的で美しいボディフォルムを持ちながらも、珍車で片付けられてしまったエアフローも、マニアックな一部のロッダーによって支持が高いモデル。この個体は、リフェンダーの延長、ルーフを46年型クライスラーの4ドア車から流用するなど、そのエアロフォルムなシルエットをよりスムースにリスタイリング。
MUSCLE CARS
ストリートロッド(一般的には48年型以前で括る)に限定したイベントでも、時間の経過に伴って対象モデルを排気ガス規制を基準に70年代初頭まで広げられている。そのため、ストリートロッドのオーナーやショップもこぞってマッスルカーをベースとしたハイダラーなプロジェクトを進める傾向が定着。
それと同時に、マッスルカーのオリジナルとしても魅力も再評価され、オリジナルの価値が高騰する中、オリジナルの個体は徹底して完璧なレストアを行なうのが基本となり、ベーシックなモデルにおいてもクローンとして、オリジナルのマッスパッケージ車として仕立てるスタイルが1つのカテゴリーとして定番化。
そのため、ロッド&カスタムのイベントにおいても、オリジナル・マッスルを目にする機会が増えているのだ。今年のGNRSにおいては、1つのビルディングを完全にマッスルカー専用エリアとする新たな試みを実施。ファクトリーオリジナルの状態を保持する美しい個体が100台程整列する姿は圧巻だった。
1966 Chevy Nova L79 SS
66年型のノバは基本的にはマッスパッケージは存在しないのだが、この個体はコルベットと同等の350hpを誇るL79(327ci)を搭載し、マンシー製4速マニュアル&LSDを組込んだ12ボルト・リアエンドが投入された特別仕様車。当時は396が導入されたことで、L79は世代交代のタイミングだったため、この仕様はあえてオプションリストには掲載せず一部のユーザーにだけ対応。
そのため出荷台数は定かでは無いが、近年同等の個体が取引きされた最高額は$88,000にも達した。
1970 Plymouth AAR 'Cuda
チャレンジャーTA同様、バラクーダにおけるTransAMレースのホモロゲカー。ストロボラインを駆使したAARのカラースキムは、数あるファクトリーマッスルのなかでも抜群のカッコ良さ! 現オーナーは30年間所有。
1973 AMX Javelin
マッスルカーによるGマシーン的なアプローチは、すでにあらゆるモデルで採用例があるが、隙間なAMC車に手を出すビルダーもチラホラ。現存数が極めて少ないだけに新鮮なうえ、純粋にカッコイイ!
1965 Ford Mustang
"][vc_column_text]出展車両のクオリティは現車を隈無く見なければ判断できないほど高次元だが、そんなモデルのキャラクターに見合うディスプレーも素晴らしい。ちなみに、ディスプレーに対してもアワードの用意がある。
1969 AMC AMX
コルベットの対抗馬としてAMCが投入した2シーター車、AMX。コンパクトながら390ciの大排気量エンジンが設定され、ドラッグレースでは好成績を収めるも、実売は振るわず2シーター車としてラインナップされたのは68~70年の3年間だけ。
それでもAMCを代表するマッスルカーとして近年注目が高まっているが、そもそもがマイナーな存在なため、現存数が極めて少ないため、お目にかかる事すら稀。Moparにも通じるオプションの“ビッグ・バッド・カラーズ”によるキャッチーなカラースキムが魅力大!
1970 Buick GSX
ビュイックを代表するハイパフォーマンスパッケージであるGran Sportの称号を与えられたモデルには、リビエラ、ワイルドキャット、センチュリーなど、様々なモデルが存在するが、こちらはマッスルカーとし頂点的存在でもあるGSX!!
スカイラークをベースにマッシブな455エンジンを搭載し、専用スポイラーなどで武装した生粋のマッスカー。出荷された678台の中でも、360hpのStage1仕様によるAT車は282台のみ。さらにこの個体はエアコン、フードマウントタコ、フルパワー、パフォーマンスサスなどを装備するフル装備車だ。
1970 Dodge Challenger T/A
ファイバー製フード、スポイラー、サイドマフラー、“6パック”キャブレターで武装したTrans Amレースのホモロゲ仕様T/A。“パンサーピンク”の車体色は“スプリングスペシャル”として後に追加されたオプションカラー。
1969 Chevy Camaro SS/RS Pace Car
ハガーオレンジで統一されたインテリア&ストライプが目を惹くZ11ことインディーペースカー。RSのコンバーチブルのみでラインナップされ、3,675台しか出荷されなかったコレクタブルカー。
1969 Dodge Charger Daytona
チャージャーをベースに空力特性に特化するノーズコーン&巨大なリアウィングでモディファイしたデイトナはNASCARウォリアーとして、ホモロゲ規定数に則って503台が出荷された。設定エンジンはウェッジ最強の440(4bbl)、そして、この個体が搭載するV8最強の426HEMI(8bbl)の2種。
1970 Ford Mustang BOSS 429
高い知名度に反して出荷数はわずか499機の激レアな“ボスナイン”こと429BOSS搭載車。NASCARにて無敵のクライスラー426HEMIの対抗馬として導入したFoMoCo最強のエンジン。
69年が油圧式リフターなのに対し70年型はよりHotな機械式なのがポイント! コロラドからの1145マイルの距離を17時間かけ自走でエントリー! 2.73:1のハイギヤとあって燃費は6.8㎞/?を確保する!
1970 Pontiac GTO The Judge
ブルー系の“アイブロー”ストライプが映える、くすみない真っ白な車体色“ポーラーホワイト”は、当時はジャッジのプロモーションカラーながら、希少な存在。70年型GTOの中でもジャッジの出荷数は3629台。この個体は高校の卒業祝いとして両親から新車でプレゼントされたもの。ジャッジをプレゼントしてくれる両親も素晴らしいが、今でも大切に所有するオーナーのクルマ愛がステキだ。
1966 Pontiac GTO
約77,000台が出荷されたGTOの中でも、わずか67台しか出荷されなかった“ラムエアーパン”こと2バレル・3連装による6バレル仕様によるラムエアー車(389ci/360hp)。マンシー4速マニュアル&3.90:1ポジトラックを設定したドラッグ向けのリアルマッスル!
1963 Chevy Corvette Fuel-Injected
“サドルタン”の車体色が新鮮かつ上品なスプリットウィンドー・クーペ。設定された6種の327エンジンの中でも、もっともパワフルで高額オプションだった360hpを誇るフュエルインジェクション車。
1971 Plymouth GTX
NASCARウォリーアーならではの空力特性に優れるグラマラスなボディシャイプが魅力的な71年型。無条件で440ciを搭載するラグジュアリー指向のGTX。力強いネーミングやカラースキムにMoparらしさを感じる!
Special Thanks◆Deuce Factory
Text◆Hideki Ishibashi
アメ車マガジン 2018年 5月号掲載
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