キャデラックを見事に復活させた プレミアムSUVのトップランナー キャデラックエスカレード
ライバルのリンカーンが見出した新たなマーケットに対して投入されたエスカレードによって、結果的にキャデラックは息を吹き返すことになった
CADILLAC ESCALADE(キャデラックエスカレード) 1999-2000, 2002y-
American Cars Best20
1990年代、キャデラックブランドはすでに「オジサン」たちのものでしかなくなっていた。しかし、ライバルのリンカーンが見出した新たなマーケットに対して投入されたエスカレードによって、結果的にキャデラックは息を吹き返すことになった。 キャデラック・エスカレードは本誌の読者ならご存知のとおり、高級SUVの代名詞的な存在になっている。かつて、アメリカ人のレジャーの足といえば、ステーションワゴンでありピックアップトラックベースのゴツい4WDであったりしたが、いまや乗り心地もよく、ゆったり広々快適なSUVがそれに取って代わっている。
レジャーの足としてだけではない。むしろ日常の足として、SUVはアメリカ人になくてはならない存在になった。そんなSUVの高級路線のトップランナーとして位置しているのがエスカレードなのだ。エスカレードの現行モデルは2015年モデルからの第四世代。
先代モデルからその兆しはあったものの、現行モデルでは正規輸入車の新車価格も上級グレードのプラチナムになると1360万円となり、言ってみれば国際的には安さが売りだったアメ車としては完全に一段階上の存在になった感がある。そのため当然、限られた人にしか手の届かないものとなっているのは間違いなく、今の日本国内では、近年になって漸増していると言われるプチ富裕層がターゲットとなっている。
しかしそれだけに、実際に乗ってみるとその高級車ぶりは圧倒的なものであって、世界的に細部にこだわるので有名な日本人の目から見ても、仕上がりに文句の付けようがない。かつてのアメ車は、内装においても外装においてもパーツとパーツの合わせ目には大きなスキ間が空いていたり、ズレていたりするものを平気で売っていたものだった。
むしろそれが「味」であるなどと言ってはばからないファンたちに支えられていた面があったのも確かである。しかし現在のエスカレードにはもはやそんなところは探しても見つかることはなく、その精度の高さは誰が見ても「一級品」と評価できるものだ。内外装の仕上がりだけではない。最新の自動車としての機能にももちろん抜かりはないのだ。
スタートボタンによってエンジンを始動させても室内には振動もなく騒音もない。むしろエンジンがかかっていないのかと勘違いしてもう一度スタートボタンを押しそうになって、タコメーターを見て慌てて思い直すくらいだ。かつてアメ車について言われた「デカい、うるさい、燃費悪い」のうち、「うるさい」についてはまったく当てはまらない。
それが走り出してからも同じなのだ。2.5トンを大きく超える重量を持つエスカレードだが、加速はスルスルと非常にスムーズ。あまりにもスムーズなのでスピード感がなく、一般道でも高速でも、スピードメーターを見ていないとアッという間に法定速度を超えている。これは、6.2?V8エンジンと8速ATのマッチングが非常に良いということでもある。
注意していないと変速にも気づかないほどである。もちろん運転している時だけでなく、助手席や後席に座っている時でも快適度は高い。セカンドシートの足もとも広く、このユッタリ感はセダンにはないもの。SUVが選ばれるのには理由があるのだ。上級グレードのプラチナムなら前席ヘッドレストの後ろ側にDVDプレイヤー用のモニターも標準装備となる。
これはもうリムジン感覚である。乗り心地が良いのはマグネティックセレクティブライドコントロールのダンパー制御によるものでもあるし、アクティブフューエルマネジメントによって低負荷運転中には8気筒のうち4気筒を休止させて燃費性能を高めるなど、高級車としての先端装備も用意されている。
どこから見てもスキのない超高級SUVとして仕上げられたのが最新エスカレードなのだ。
2017 Cadillac Escalade Platinum Specifications | |
全長 | 5195㎜ |
全幅 | 2065㎜ |
全高 | 1910㎜ |
ホイールベース | 2950㎜ |
トレッド | 前 1745㎜/後 1745㎜ |
重量 | 2670kg |
乗車定員 | 7名 |
エンジンタイプ | V8 OHV |
総排気量 | 6.2? |
内径×行程 | 103.2㎜× 92.0㎜ |
圧縮比 | 10.0 : 1 |
最高出力 | 426ps/ 5600rpm |
最大トルク | 63.5kg-m / 4100rpm |
燃料供給装置 | 電子式燃料噴射(筒内直接噴射) |
変速機 | 8AT |
サスペンション前 | ダブル ウイッシュボーン・コイルスプリング |
サスペンション後 | 5リンクリジッド・コイルスプリング |
ブレーキ前 | ベンチレーテッドディスク |
ブレーキ後 | ベンチレーテッドディスク |
タイヤサイズ前後 | P285/45R22 |
1st Generation 1999-2000
リンカーン・ナビゲーターの大ヒットに急ぎ対応するために造られた初代エスカレード。その実態はGMCユーコン・デナーリのバッヂエンジニアリングであって、インテリアにわずかな変更を加えたのみ。それでもこれがかなり売れた時代だったのである。
2nd Generation 2002-06
間に合わせの急造モデルだった初代エスカレードに対して、こちらは当初からキャデラックとして企画されたもの。これが爆発的に売れたのはご存じのとおり。日本にも相当数が輸入され、改めてキャデラックブランドの認知を高めたモデルでもあった。
3rd Generation 2007-14
アメリカ本国のSUVブーム、それもプレミアムSUVブームの牽引車となったエスカレードの第二弾は、潤沢なコストをかけて贅沢に造られた。時期的にアメ車の電子制御技術が一段階進んだのと重なったこともあって、自動車としての品質が格段に上がった印象だった。先代モデルよりもボリューミーなスタイリングはプレミアムSUVの豊かさの象徴のようにも見え、今でもそうした「豊かなアメリカ」のイメージを求めるファンからは厚い支持を受けている。
CUSTOMIZED MODELS
ド派手なカスタムも多数
エスカレードは車両価格自体が安くはなく、ある程度の上級者によるカスタムが多い。そのため、カスタムメニューが多岐にわたるだけでなく、カーショーに出して見てもらう、あるいは賞を狙うために造られたものも多い。それこそ無数に造られたと言ってもよいエスカレードのカスタムにはド派手なものが多いのが特徴だ。
1990年代初頭からのアメリカ国内におけるSUVブームは勢いがあり、すべてのSUVが販売台数を伸ばしていた。そんな中でキャデラックブランドのSUVという企画が持ち上がり、準備が進められていた。そんな矢先、リンカーンが突如として「ナビゲーター」というフルサイズSUVを、1998年モデルとしてリリースした。
フォード・エクスペディションをベースとしたものだったが、内外装はすっかりリンカーンとしての風格を備えたもので、発売と同時に大ヒットモデルとなった。
キャデラックディーラーたちはGMに対して一斉にキャデラックブランドのSUVを求める声を上げたが、それほどの市場の盛り上がりを予想していなかったGMでは、すぐに新型SUVをリリースできるほどの準備ができていなかった。そこで、シボレー・タホよりも上級な位置づけのGMCユーコンに、さらに上級なバージョンとして「ユーコン・デナーリ」を追加設定、それをベースとした初代エスカレードをキャデラックブランドのSUVとしてリリースした。
しかしそんな状況だったので、分かっていたとはいえ、ナビゲーターの人気には及ばなかった。しかしながら2002年モデルとしてスタートした第二世代(実質的には最初のエスカレード)はナビゲーターをもしのぐ大ヒットモデルとなり、ここに本格的なプレミアムSUVブームが幕を開けたのだった。
http://www.cadillacjapan.com
■Text|アメ車MAGAZINE
アメ車マガジン 2018年 3月号掲載
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