【ダッジチャージャー】ダッジブランドを牽引したイメージリーダー

クーペ

ビンテージ

ダッジ

アメマガ2024年2月号

マッドネスモータース

埼玉県

AMERICAN VINTAGE

チャージャー

チャージャーRT

過去のアメリカ車のほとんどは、市場投入にあたってはコアな理由を持っている。そのなかでも空力とスタイリング、そして兄弟車を持たないという意味では、ダッジ・チャージャーほどマニアックかつ独自の道を歩んだ存在はほかに例がなかった。

AMERICAN VINTAGE CAR HEAVEN -米国的旧車天国-


ワンアンドオンリーを目指した特別な一台

1968 Dodge Charger R/T

歴史的に見て、アメ車はブランド間において兄弟車が多いという特徴があった。フォードの場合だとフォードとマーキュリー。GMの場合はシボレー/オールズモビル/ビュイック/ポンティアック。クライスラーはダッジとプリマス。このほかにも本来のブランドイメージに即した様々なキャラクターとプライスレンジを駆使して、多彩なラインナップを形成していたのがアメ車だった。

 

しかし、なかにはそうしたセオリーには相当しないスタンドアローンな存在もあった。その代表的な一台こそがダッジ・チャージャーである。初代ダッジ・チャージャーは、1965年の秋に翌1966年型のニューモデルとしてデビューを飾った。

 

シャシーコンポーネンツはいわゆるBボディのインターミディエイト。エクステリアデザインはいうまでもなく、インテリアに至るまで非常に凝ったデザインのスペシャルティ度の高いファストバック2ドアハードトップであり、敢えて人気ボディバリエーションだったコンバーチブルを設定せずに、ハードトップのみの展開はこの時代としては異例なことだった。デザイナーは新進気鋭のビル・ブラウンライである。

 

実のところダッジ・チャージャーがデビューするまでには多くの紆余曲折があった。もともとは1962年の夏頃に、プリマスで開発中だったバリアントをベースにした、コンパクトスペシャルティ(後のバラクーダ)のダッジ・バージョンとして投入する計画だったのが、ダッジのコンパクトカー自体の売れ行きが芳しくなかったことから見送られた。

 

その後、フォード・マスタングの存在が次第に明らかになるにつれて、スタイリッシュかつプレミアム性に優れたスペシャルティカーの必要性を再確認したダッジの経営陣は、価格設定にも余裕があり収益性にもより優れるということで、インターミディエイトでの投入を決心したということである。

 

こうした複雑ないきさつを経て市場に投入された初代ダッジ・チャージャーは、そのブランド違いの兄弟車が存在しない、ボディバリエーションは一種類だけ、内装デザインに力を入れていたというスペシャルさを高く評価され、一応の成功作として当時のダッジを代表するモデルとなった。デザインのベースとなったのは、1965年に発表されていたショーモデルの「チャージャーⅡ」である。

 

同年代の似たテイストのモデルとしては、フルサイズとインターミディエイトの違いこそあれ、フォード・サンダーバードやビュイック・リビエラに近いものがあったといっていいだろう。

 

とはいえスタイル重視のモデルとあれば、早い時期での新型への更新もまたある意味必須だった。初代が発売されると前後して早くも次期モデルの開発に着手されており、1967年秋に翌1968年型のニューモデルとして市販が開始された。それが今回紹介している1968年代ダッジ・チャージャーR/Tなのである。二代目もボディバリエーションが2ドアハードトップのみ。グレードは事実上の単グレード+オプションパッケージだった前モデルに対して、新型には、新たにハイパフォーマンスグレードのR/Tが加わっていた。

1968年型ダッジ・チャージャーR/Tは、スタイリッシュな2ドアハードトップ、格納式のヒドゥンヘッドライトといった特徴的な部分は先代から引き継ぎつつも、全体的にはより空力性能に特化した印象があった。デザインはクライスラーのエース的存在だったエルウッド・エンジェルの手に拠るものである。

 

R/Tというのはロード&トラックを意味しており、ストックカーレースやドラッグレースといったモータースポーツイメージを強く印象付ける目的があった。R/Tというグレード自体は前年の1967年モデルからダッジ・コロネットR/Tを通じて展開されていた。ちなみにR/Tのエンジンラインナップは、375hpを発生していた440マグナムをスタンダードに、最強のストリートエンジンだった425hpの426ヘミをオプションに設定するという極めてシンプルなもの。

この二種類のエンジンはあくまでストリート仕様ではあったものの、基本的にチューン度はかなり高かった。それだけに、一般のユーザーが気軽に購入するといった性格のクルマではなかった。あくまでハイパフォーマンスを求める一部の濃いマニアのためのクルマだったということである。トランスミッションは、3速オートマチックのトークフライトA-727と4速マニュアルのA-833のいずれかを選択する例が多かった。

 

初代チャージャーはカスタムカー然とした個性的なインテリアが特徴だったが、このモデルからはシンプルなモノへと改められた。これはユーザーのインテリアデザインに対する要求度がさほど高くはなかったことと、製造コスト低減が理由だったのだ。

 

1968年からダッジは新たに「スキャットパック」と銘打ったハイパフォーマンスカーキャンペーンを開始することとなった。対象車はチャージャーR/T、コロネットR/T、スーパービー、ダートGT/GTSである。ここではスーパービーのイメージキャラクターでもあったバンブルビー(マルハナバチ)と共にボディの後端にダブルのストライプ、名付けてバンブルビーストライプをセットするなどして、ダッジのハイパフォーマンスモデルの存在を強くアピールするという戦略だったといって良いだろう。

 

これらの中でもとくにモータースポーツにおけるイメージリーダー的存在だったのは、ほかでもないチャージャーR/Tである。ドラッグレースはもちろん、ストックカーレースにおけるその存在感は圧倒的だったといっていい。元々チャージャーは初代からその空力性能の高さゆえにストックカーレースでも独自のポジションを築いており、二代目のボディデザインは最初からそれを想定していたことは明らかだった。市販モデルでありながらレースカーとして使うことを前提に、ボディデザインが決められていた稀有な存在だったということである。

同じクライスラーのなかでもダッジにしか存在しないモデルだったということもまた、その特別さを際立てることとなった。ストックカーレースにおけるプリマスユーザーのなかには、同じクライスラーに属するブランドなのだからプリマスからも兄弟車を出して欲しいという声が多々あったのにもかかわらず、ダッジはスタンドアローンであり続けた。

 

ダッジ・チャージャーは、翌1969年モデルでストックカーレース用にさらに空力性能を高めたチャージャー500と、さらなるエボリューションモデルというべきウイングとロングノーズで武装したチャージャー500デイトナを追加することとなる。その原型というべき1968年型は、アメリカ車の歴史のなかに印象的な一石を投じた存在に外ならない。

ロングノーズから流れる様なラインのルーフを経て、ゆるやかに収束するボディシルエット。ドアの部分がキ
レイに絞られた、コークボトルラインであることがよく分かる。またテール後端がわずかに跳ね上がっている
のも分かる。フェンダーアーチモール以外には目立つクロームトリムは使われていなかった。オプションのバ
イナルトップは、このクルマのボディラインにはよく似合っていた。

ヒドゥンヘッドライトのカバーを開くと4灯ヘッドライトが現れた。バンパーしたのウインカーランプはやや大きな丸形である。クロームバンパーのナンバープレートベースは、控えめなデザインのオーバーライダーに囲まれていた。

オプションのマグナム500ラリーホイール。スタンダードはボディ同色のスチールにセンターホイールキャップ。丸型4灯テールランプも68年型の外観的特徴である。69年型は細長い横型にデザインが変更されていた。

小さな丸形のサイドマーカーランプは1968年型の特徴である。1969年型は細長い長方形に改められていた。赤いR/Tのエンブレムは、ダッジにおけるハイパフォーマンスの象徴でもあった。ロード&トラック(公道&スピードウェイ)を意味していた。

ドアのプレスラインはデザイン上のアクセントであると同時に空力的な効果という意味でも重要な存在だったといわれている。リアフェンダー側面のラインとも関連性があった。

RBブロックのなかでは最大排気量だった440ciをベースに、吸排気系とカムシャフトをチューニングした375hp の440マグナムユニットである。ピークパワーは426ヘミには及ばなかったが、実用性とハイパフォーマンスを両立した名機でもあった。翌年には2バレルキャブ×3の6パック仕様も追加された。

ボディとカラーコーディネートされたインテリアは、初代モデルと比較するとやや質素にはなっていたものの、デザイン的には十分に検討されたものだった。センターコンソールは、セパレートシートとの組み合わせを前提としたオプションである。ダッシュパネルの大きな二つの丸形ゲージは、右がスピードメーター、左が時計とタコメーターのコンビネーションゲージである。この仕様はオプションのラリーダッシュであり、燃料、水温、油圧、電流の4連補助ゲージが特徴だった。

フロアコンソールにセットされた「A-727トークフライト」のATシフター。この他にも、シンプルなコラムシフターのバリエーションも存在していた。ロックボタンは、シフトノブのてっぺんにある。ユニークなデザインだったオプションのセパレートバケットシート。こうした部分がチャージャーらしかった。


THANKS:MADNESS MOTORS【マッドネスモータース】
TEL:048-229-8396
HP:http://madnessmotors.jp


PHOTO:浅井岳男
TEXT:矢吹明紀
アメ車マガジン 2024年2月号掲載


関連記事

RELATED


購入もアフターもオールインポートが選ばれる理由

関東でチャレンジャー&チャージャーのオーナーが集まるショップといえば、埼玉県のオールインポートの名が挙がる。大きな理は、品質の高い車両・透明性のある車両価格表記・オリジナルパーツを含むカスタム技術だ。

半世紀の時を経て熟成された、魅力を放つファーストカマロ

アメリカンビンテージマッスルの中でもっとも知名度の高いメジャーモデルであるカマロ。その初代モデル最終である1969年型をベースとしながらも、絶妙に現代版へとアップデート!

【プリマスロードランナー】マッスルカーナショナルズの引き継ぎがターニングポイント!

69年型シェベルを愛用してきたオーナーさんがこのロードランナーを手に入れたのが2019年。マッスルカーナショナルズを若い世代に委ねると、お声がかかったタイミングでの乗り換えはある意味、運命!

【シェビーⅡノバ】製作途中のまま10年間寝かせていた車両を1年かけて蘇生

旧車道楽とは面白いもので、長い間放置していた個体が原石の様に映ることも多々ある。手つかずのまま放置され続けた個体は、目覚めるキッカケを静かに待ちわびていたかの様に再び息吹を吹き込み、颯爽と駆け抜ける。

歳相応の姿ながら細部まで、綺麗なオリジナル志向【シボレーカマロベルリネッタ】

Z28を筆頭にマッスルカーの代名詞としても捉えられ、プロスピード仕様などにカスタムされた個体が多い1979年型カマロのオリジナルストックを発掘!

 

最新記事


2024/09/16

せっかくアメ車に乗っているのならアクセル床まで踏み込んじゃいな!【82 Cup】

イベントレポート

毎年、美浜サーキットで開催される「82cup」。レースと思うかもしれないが、気軽に参加できる走行会だ。2024年も東海カーズはお客さんを引き連れて、思う存分走り回っていた。

2024/09/13

【1995y シボレーサバーバン】外装だけでなくエンジンや足回りもアレンジしたい

SUV

シボレー

アメ車専門店のスタッフはどんな愛車を所有しているのだろう?そんな素朴な疑問からスタートしたこのコーナー。チャレンジャー専門店でカスタムやメンテナンスを担当する上原さんに話を聞いてみた。

2024/09/12

愛車復活の儀式フロアカーペットの交換!!防音断熱材も貼って快適車内空間へ生まれ変わる

メンテナンス

経年劣化が進むのは、外装だけじゃなく内装も進行していく。中でも年数と共に汚れが目立ち、悪臭の原因となるのがフロアカーペット。頑張って掃除をしても限界があるため、そんな時は、思い切って張り替えも選択肢。豊富なカラーから選ぶこともでき、車内の雰囲気は一気に変わっていくぞ!

2024/09/11

カスタムのセオリーが別次元、奥深きコルベットC8カスタムの世界

クーペ

シボレー

ミッドシップ化によってC7以前とは勝手が異なり、スーパーカーとしての装いが映える個体へと進化したC8。まだモデルケースの少ないC8カスタムシーンの中でオートメッセ出展を果たした、最旬スタイルに迫る!

ランキング


2024/09/16

せっかくアメ車に乗っているのならアクセル床まで踏み込んじゃいな!【82 Cup】

イベントレポート

毎年、美浜サーキットで開催される「82cup」。レースと思うかもしれないが、気軽に参加できる走行会だ。2024年も東海カーズはお客さんを引き連れて、思う存分走り回っていた。

2018/02/07

走っているとやけにハンドルがブレる…原因はタイヤ?ホイールバランス?それともブレーキか?【REFRESH PROJECT】

メンテナンス

コラム

走行中に感じた違和感。それはハンドルのブレ。【REFRESH PROJECT】

2021/03/15

【注目のアメリカン雑貨】大阪の老舗ブランド、アンダーウッドが同業者の買い付け地に!

ショップ

大阪府吹田市の閑静な住宅街にあるユニークなショップ「アンダーウッドブランド」。ヴィンテージカーやオートバイからアパレル、多肉植物など幅広いアメリカンアイテムが豊富。同店はヴィンテージ・アイテムの素晴らしいコレクションを展示するだけでなく、カスタムカーやオートバイのレストアなど様々なサービスも提供しており、一度は訪れるべきショップ!
UNDERWOOD BRAND【アンダーウッドブランド】

2022/04/08

US日産の巨大ユーティリティバンのNV3500

バン

逆輸入車

2019 Nissan NV Passenger