オリジナルの良さを維持して、乗り続けていきたい名車GMCジミー
K5ブレイザーよりもさらにレアキャラなGMC・ジミーを愛車に持つ田中さん。トラックにシェルを乗せただけに見えるルーツの濃さが、元サニトラ乗りの心を鷲掴み。“イジるよりも維持る”がモットーだ!
THE AMERICAN TRUCK & SUV
整備履歴から伝わってくる、本国オーナーの意志を継承
1987 GMC JIMMY
ここ数年、80~90年代のアメ車の価格が高騰中なのは周知の事実。一昔前までとは中古車市場も大きく変化しており、紹介する80年代のK5ブレイザーなんかの価格も例外なくプレミア価格となってきている。
紹介する田中さんがこのGMC・ジミーを購入したのが今から約5年前。現在ほど価格高騰の影響はなかったものの、程度の良い個体そのものが減少傾向にある中で出会った上質な個体。
元々はミッドナイトパープルのサニートラックを愛用していた彼が乗り変えるキッカケとなったのは、愛娘の存在だ。妻と幼い子供3人なら、なんとかトラックでもやっていけると思いきや想定以上に窮屈で、これは小学生に上がる頃にはヤバいかもと不安になり、ファミリーカーとしてのスペックを考慮しつつ次の愛車を物色。
当初はラムバンなどのフルサイズバンも視野に探していたものの、トラック好きな彼にとってみるとちょっとテイストが異なる。そんな中、トラックにシェルを乗せた限りなくトラックに近いスタイルのK5ブレイザーを見つけて「コレだ!」と心に決めた。
中古車物件サイトでいろいろ検索する中で最終的にディーラー車のK5ブレイザーとジミーの二択で迷った末に、どうせ乗るならよりレアでマニアックなジミーを選んだと言う。
現車が来てグローブボックスの中を調べると、何やら本国のサービスマニュアル。さらにビッシリと事細かに記載された整備記録まで発見。オイル交換の頻度ひとつ見ても本国の前オーナーが大切にしてきたことが伝わってくる内容に、「これは雑に扱えないな。」とその意志を継承することにした。
しかしいくら大切にしてきたとはいっても1987年モデル。すでに35年も前のクルマなのでオイル下がりによる白煙現象など確実に経年劣化は進行していた。純正の2枚リーフサスペンションもお疲れの様子でヘタリきっていた。そこで6ディグリーズにお願いしてヘッドオーバーホールを依頼。
リースサスペンションはヘビーデューティ仕様の3枚リーフに変更してシャキッと感を取り戻した。ちなみにブラウンのシェルはシエラクラシックの上級グレードに採用される純正カラーで、実際に存在するカラーパターンと知ってより愛着が湧いたとのこと。唯一のアクセントと言えるJAFマークは、以前愛用していたサニトラからの継承で、愛着を持って接してきた名残だ。
また、前の愛車同様、好きなクルマに二つ返事で快諾してサポートしてくれる妻への感謝の気持ちも語ってくれた。そんな彼のジミーの価値は年々上昇傾向。このまま大切に乗り続けることで、その価値はさらに上がっていくことだろう。
90年代のGMC・ユーコンとは異なる字体の当時物エンブレムやシエラクラシック、ボンネットフードマスコットなど装飾の一つ一つがどれも新車当時のまま綺麗に残っていることが素晴らしい。
エンジンはキャブレターからTBIインジェクションに進化した初年度モデルで、トランスミッションは700R4の4速ATの組み合わせ。見た目に扱い難そうな個体ではあるが、キャブ車特有の癖もなく90年代のアメ車同様に扱えるところも、80年代後半モデルのK5ブレイザーやジミーの良さと言える。
フロントリーフがエンジンの重さに耐えられずにフラットもしくは逆反り状態でサスペンションとしての機能を果たせていないのはK5の持病とも言える症状。これを改善するためヘビーデューティ仕様の3枚リーフへ変更。フロントの車高がシャキッとしたことで、33インチのタイヤも余裕を持って履きこなせるまでに改善。
この辺りのモデルはステアリングが交換されていることが多いが、このジミーはステアリングを含めてフルオリジナル。セカンドシート両サイドのアームレストも状態が良く、シェル内側の状態も非常にクリーン。子供が乗車する際はフロントシートを畳んで乗降となるが、小学三年生ならサイドステップを介して自分で乗降が可能。ゆったり後部座席で寛げる。
サービルマニュアルや整備記録から、本国オーナー時代の扱われ方が一目瞭然。もはやこれらがオークションに出品されても高値で取引されるのではと思わしきお宝がグローブボックスの中にしっかりと残っていたことが判明して、田中さんもこれは大事に維持してかないと!と使命感が高まったと言う。
OWNER'S FILE:Yusuke Tanaka
PHOTO&TEXT:石井秋良
アメ車マガジン 2022年10月号掲載
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