独創的で希少性の高い初代バラクーダはペディグリーの良さも相まってコレクタブルな存在
ハイパフォーマンスを誇る大排気量V8が主流のマッスルカー人気に追従してコンパクトなAボディ車の人気が沸騰中。中でも独創的で希少性の高い初代バラクーダはペディグリーの良さも相まってコレクタブルな存在。
前衛的なスタイリングが目を引く、マニアにウケる1stバラクーダ
MOPAR LOVE!!! 愛して止まないモパーの魅力
1966 PLYMOUT H BARRACUDA
独創的で希少性の高いファースト・バラクーダ
プリマス・バラクーダというと、日本ではサードジェネレーションにして最終型となる1970~1974年型に人気が一極集中している。よりポピュラーな存在のダッジ・チャレンジャーとの兄弟車となるEボディ・プラットフォームによる洗練されたスタイリングの美しさで広く受け入れられている。
一方の市販ドラッグレース専用仕様(スーパーストック)が存在するセカンドジェネレーションは、その圧倒的なポテンシャルの高さでマッスルカーとしても、ドラッグレースの歴史においても重要な存在だ。426HEMIを搭載するオリジナル車は、現在NHRAのスーパーストックでは、HEMIスーパーストックとして専用のカテゴリーが設けられるほど最強のポテンシャルを誇る。それだけに、近年ではミニチュアカーでのリリースも増加傾向にある。
しかしながら、ルーツである初代は、コンパクトなエコノミーカーであるバリアントをファストバック化し、ドアを含めてAピラーより前方はヴァリアントと共通。64年のデビュー当時のトレンドとニーズにマッチしながらも、直後にデビューしたフォード・マスタングにシェアを奪われてしまう。ラップアラウンドのリアガラスが特徴的なスタイリングは、前衛的で今こそ評価できるが、当時としては一般的には受けなかったようだ。エコノミーなモデルとしてのラインナップなので、ハイパフォーマンスなパッケージが存在せず、クラシックな存在となった近年のMoparマッスル人気の中でもニッチな存在だった。
しかし、近年のMopar人気と同時に、クラシックなモデルの人気が年々高まる中で、初代バラクーダだけでなく、ベーシックなバリアントまでもが注目されるようになり、希少なだけにバリューにおいても立派なコレクタブルカーとなっているのだ。
極めて少数で遭遇率も低い、初代バラクーダが人気上昇中
バラクーダと同じターゲットに向けて後出ししたマスタングは、結果として“ポニーカー”セグメントの立役者として認識されるほどの支持を得て以降、現在まで安定した人気を獲得しているのは世界共通。それに対して初代バラクーダは、日本では完全にマイナーな存在…。実車だけでなく、誌面などでも目にする機会はほぼ無かった。日本ではパフォーマンスの高さ以上に、希少価値の高さをポイントとするコレクター志向が強いため、MoparファンであってもコンパクトなAボディ車はスルーされていた。
Aボディでもハイパフォーマンスパッケージであるダスター/デーモンは一部のマニアックなファンが所有したり、バリアントやダートであっても、より洗練された60年代後期のモデルなら、トレンドに流されない良い意味でスノッブな人が所有するケースは意外にもある。しかし、ペディグリー的には良いバラクーダでも、初代となると極めて少数。相当数のビンテージMoparを乗り継いで来た筆者としても、友人から譲り受けた65年型以外では、初代バラクーダとの遭遇はほぼ無い。
この66年型は、フォーティーエイトがカスタマーのオーダーによって8年ほど前にアメリカより輸入~登録。以後国内では3オーナー目の現在まで同ショップで対応している。現在のオーナーは初代バラクーダとはこの個体がForSaleとなった際に初遭遇し、その独創的なスタイリングに魅力を感じ即決に至った。元は赤だった車体色は塗装業を営む自身で黒に再塗装。内装色の赤とのコントラストによって、独創的なスタイリングが際立つ。
コンパクトな大衆車であるバリアントと共通のフロントエンドは平凡ながら、リアビューはラップアラウンドな大型のリアガラスによるファストバックスタイルが先進的。トランク部とテールレンズにかけての立体的なスタイリングは現代でもモダンに感じるほど。
ホイールはクライスラー車では定番中の定番、純正のラリータイプ。タイヤサイズは215/65R14。Aボディ車のホイールは、コンパクト車ながら5ラグではあるものの、小径の100 ㎜のため社外品にアレンジする上での選択肢は極めて限られる。
設定エンジンは170ci(2.8ℓ)、225ci(3.7ℓ)の2 種の“スラント6”(傾斜するレイアウトが特徴の直列6気筒)、そして唯一のV8である273ci(4.5ℓ)の3種。この個体はV8+3速AT"Torqueflite 6”のコンビネーション。パワーブレーキとエアコンは、社外品でアップデートしている。
搭載する273ci V8の最高出力は180馬力程度でスタンダードな仕様だが、バラクーダの車重は1.4tほどと軽量なため、市街地から高速走行まで、必要にして十分なパフォーマンスが得られる。エアコンなどの快適装備もアップデートされているので、不満なく日常使用に対応する。扱いやすいサイズ感ながらも、存在感は十分だ。
四角を基調とした簡素なデザインのバリアントに対して、バラクーダでは大径2、小径4によるメーターのレイアウトでスポーティな印象。リアシートを倒し、開閉式のトランク部のハッチを開けると2m以上のベットのようなスペースが生まれる。
PHOTO&TEXT:石橋秀樹
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