JEEPを駆逐するためのFORDの刺客それがブロンコに課せられた使命!
悍馬(かんば:あばれ馬と言う意味)と言う名を授けられ、1966年に登場した初代ブロンコ。当初からJEEPのライバルとして誕生しており、今回復活した6代目には、明らかにそのDNAが受け継がれている。
四半世紀の眠りから醒めたあばれ馬が本気の4WDになって日本に襲来
JEEPを駆逐するためのFORDの刺客それがブロンコに課せられた使命!
2021 FORD BRONCO BADLANDS
2017年の北米オートショーでブロンコが復活すると発表され、2019年3月にはプロトタイプがWEB上などで発表されるや否や、にわかに注目を集めていた新型ブロンコ。事実、2019年のSEMAでFORDブースのど真ん中に展示されていたのは、Eマスタングなどではなく、アーリーブロンコが何の説明もなく置かれていた。でもこれこそがFORDからのメッセージで「2020年のSEMAはブロンコがやって来るから待っていろよ!」と言うもの。6代目マスタングが初代を彷彿とさせるデザインで大ヒットしたように、この6代目ブロンコも初代モデルのエッセンスを随所に盛り込んでいるのがよく分かる。
1966年~1996年までは途絶えることなく販売されていたのだが、初代モデルこそJEEPをターゲットとしていたが、その後のモデルはFシリーズなどとフレームを共通化したために大型化。にもかかわらず、ボディタイプは2ドアしか設定されないので、決して使い勝手が良いとは言えなかった。後にFORDがエクスプローラーを発売し、大ヒットを収めたことを考えると、モデルが途絶えるのも頷けると言うものだ。
だが、アメリカのみならず世界的に見てもマイノリティかもしれないが、「SUVではなく4WDが欲しい!」と言うユーザーは間違いなく一定数存在する。ある意味それにいち早く気づいたのがクライスラーで、2007年に登場したJKラングラーには、シリーズ初となる4ドアモデルが登場。
オフロード走行を楽しむ、熱狂的なJEEPファンには受け入れられなかったが、巷の人々は大歓迎! アメリカのみならず世界中でその姿を見かけるようになり、とくにアジア圏では日本が一番売れている市場にまで成長しており、アンリミテッドこそ現在のJEEP人気の立役者だと言えるだろう。
ちなみにラングラーをアメ車として見た場合、決して車内はアメリカンサイズとは言い難い。もちろんオフロード走行を念頭に置いた適切なボディサイズを採用しているからで、実際日本でも使いやすいサイズではある。だが、もう少しボディの横幅が広かったり、ロールバーがあるために荷室が思ったほど広くない…と思っているユーザーも少なくはない。そんなラングラーのネガティブな部分を徹底的に研究し尽くしたのが、このブロンコという訳だ。
今回のブロンコには、2ドアモデルだけでなく初の4ドアモデルが登場! 燃費や軽快な走りにはモノコックボディの方が適しているが、オフロードを走れないような軟弱なクルマにブロンコを名乗る資格はない! そのためラダーフレーム構造を堅持しており、進化させつつも守るべきものを守った、正統派4WDとして復活を遂げたと言えるだろう。スタイリングは、明らかにアウトドアユースを意識したもので、未塗装のオーバーフェンダーなどは、もはや世界的に見ても4WDとしてのアイデンティティの一部となっている。
また、ルーフ全面が開くソフトトップが標準スタイルで、ハードトップやリトラクタブルのソフトトップなども選択が可能。ボディカラーは現時点では全11色で、ポップなものから落ち着いたアースカラーまで豊富にラインナップ。グレード展開は、2ドア/4ドアそれぞれ6グレードを用意しており、機能や装備が異なる。
さて、そんな魅力あふれる新型ブロンコを、いち早く日本に輸入したのは愛知のライオンハート。今回取材したモデルは2021年モデルで、限定モデルのファーストエディションを含め全7グレードを展開。その中で、もっともオフロード性能を重視した仕様が、このBADLANDS(荒地)だ。
最大の特徴は金属製のヘビーデューティバンパーが標準装備となっているが、最新の安全ブレーキももちろん標準装備。ヘッドライトはデイライト機能付きのLEDとなっており、最新技術を盛り込むものの初代ブロンコをオマージュした可愛らしいフロントマスクは、どことなく愛嬌も感じられる。
搭載エンジンは、マスタングなどで採用される2.3Lのエコブースト。オプションで2.7Lのエコブーストも設定されているが、撮影のために少し動かしただけでも十分トルクフルな印象を感じた。また些細な部分ではあるが、エアインテークが高い位置にセットされているので、シュノーケルなどを追加しなくても渡河性能は高いと言えるだろう。
サスペンションを見てみると、フロントはダブルウィッシュボーンのコイルスプリングで、リアはリジッド式コイルスプリングを採用。ショックはビルシュタインのリザーバータンク付きとなっているので、オンロードからオフロードまで安定感のある走りが楽しめそうだ。今回の車両には標準で285/70R17(33インチ)のATが標準装備されているが、ホイールハウスのクリアランスは以上に余裕がある。取材後にスペックを調べたところ、オプションで33インチのMTやさらには35インチのMTタイヤも用意されており、バッドランドの性格を見事に反映している。
ミラーは後方だけでなく、ボディサイドの真下も確認できるよう、2面鏡となっている。一般的なミラーはドアに直接取り付けられているが、その場合、ドアを外すとミラーを移設する必要がある。それに対しブロンコは、ルーフだけでなくドアも外して走ることまで考慮して、Aピラーに取り付けられている。非常によく考えられていると言うか、見事なまでの後出しジャンケンとも言えるだろう。
それではインテリアを見てみよう。ダッシュボードは水平基調にデザインされており、運転席はややアップライトな印象。身長173cmの筆者でも、ボンネットはすべて見えるので車両感覚は実に掴みやすい。ダッシュボードの中央にはデフロックなどのスイッチが配置されており、使いやすさも重視。取材車両は6MT+クローラーギアを採用しており、駆動方式はコンベンショナルなパートタイム方式だがAWDモードも備えるので、豪雨や雪道でも安心感は高い。
シートはビニールレザータイプになっているが、高い撥水性を確保しており、アウトドアで濡れた服のまま乗り込むにはむしろファブリックやレザーよりもこの方が好都合。カーペットも最小限のサイズで、フロア全体をラバー素材でカバー。もちろん水を排出するためのドレンプラグも装備しており、汚れたらフルオープンで大胆にガシガシ洗ってしまうことも可能だ。
ラゲッジスペースは80L以上を確保しており、キャンプ道具も余裕で積載可能。ロールバーがラゲッジスペースに張り出さないよう、研究し尽くされたデザイン。ハードトップはリアウインドウが跳ね上がるが、ソフトトップも情報に持ち上げることができるので、使い勝手は良好。フロアは滑りにくい素材を採用するが、セカンドシートの背面はモケットを張るなど、荷物の固定だけでなく内装に傷がつかないようにも配慮されている。
個性的だけど見た目だけのSUVではなく、その気になれば本気でオフロードを走れるタフなギアと言えるブロンコ。でも、日常の快適な乗り心地や使い勝手も大事にしたいと言うユーザーには、まさにうってつけのクルマと断言しよう。メーカーが至れり尽くせりでなんでも機能を装備するのではなく、本当に必要な機能を装備してくれており、あとはユーザーがどう使うか考える楽しみもある。
US・FORDのサイトを見てもオプションパーツは充実しており、カスタムの幅も非常に広いと言えるだろう。基本的には街乗りがメインだけど、時々アウトドアにも出掛ける。そんなアクティブなユーザーに最適なバディとなると断言する。
クルマとしてもポテンシャルはもちろん、機能性も非常に優れた「まさに名馬」!
エクステリアは初代ブロンコを非常に意識したデザイン。レトロな雰囲気を感じさせつつも、LEDや安全ブレーキを装備。またボンネットはファイバー素材を採用しており、徹底した軽量化も行なわれている。このBADLANDSにはパウダーコート仕上げのスチールバンパーをセット。グランドクリアランスも考慮しており、またライセンスプレートがヒットしない位置にセットされているのもGOOD! ミラーの位置も、ドアを取り外すことを前提に設計されており、実に理にかなっていると言えるだろう。
樹脂未塗装タイプのオーバーフェンダーは、今やオフロードを意識したクルマには必要不可欠なアイコン。BADLANDSには285/70R17のATタイヤが標準装備されているが、このままで35インチタイヤが装着できるところにFORDの良心が垣間見える。一昔前ならかなり大掛かりなカスタムが必要だったが、今や標準で35インチタイヤが履けてしまう時代。
クルマを購入した後に様々なカスタムがしやすいこともユーザーにとっては非常に重要と言える。ボディサイドにはステップではなくロックレールも装備。また、フロントのタイヤハウス内にもガードが装着されており、ロックセクションなどで岩が挟まらないように配慮されている。
フロントサスはアルミ素材を採用し、軽量化も考慮。前後のショックはビルシュタインのリザーバータンク付きとなっており、走りを重視したいというユーザーは、これだけでBADRANDSを選ぶ意味があると言える。もちろん前後のデフロックも装備されており、フロントのスタビライザーも解除可能。派手なエンターテイメント機能よりも、オフローダーにとってはこっちの方がそそられる。
マスタングなどに採用される、2.3Lのエコブーストを搭載。ブロンコの車格を考えるともう少し大きなエンジンでも良いのでは…と思うかもしれないが、適切なギア比にセットされており、6+1MTや10ATを組み合わせればスムーズな走りが楽しめる。なお、写真左下の位置にエアインテークをセットするなど、メーカー側としても、オフロード性能を相当意識した造りとなっていることが伺える。
初代ブロンコのコンセプト「G.O.A.T.」(Goes Over Any Type of Terrain)=どんなところにも行ける! というコンセプトをキープした新型ブロンコ。運転席からの見切りの良さには驚かされ、4WDにとって本当に重要な機能を再認識させられた。
デフロックやスタビ解除ボタンは操作しやすく高い位置に配置。駆動方式の切り替えスイッチの外側のダイヤルを回せば、路面に合わせたモードを選択可能。MTのシフトをよく見ると、左下にCのマークが。これはロッククローリングなど、極低速で走るためのギアで、ラングラーのルビコンでもここまで低速ギアを装備してはいない。ボディ角部にはラバー素材のグリップも配されており、走って使うことを楽しむクルマだと言えるだろう。
シートは撥水性を重視したビニールレザー。4ドアモデルは5名乗車で、敢えて後席にはアームレストはなし! ドリンクホルダーも丸や角形でなくメッシュポケットとなっており「好きなように使ってくれよ!」とFORDの割り切り方に好感が持てる。高級SUVの様な豪華絢爛な機能や装備が好きという人にはオススメできないが、マリンスポーツやキャンプ、ウインタースポーツなどなど、非常に幅広いシーンで役立つこと間違いなし。
リトラクタブルソフトトップの場合、ラゲッジ左右のスクリーンを引き抜くだけで、ホロを完全に折りたたむことが可能。ルーフのほぼ全面が空! というとんでもない開放感が味わえる。ホロの内側は横方向にフレームが通っており、ここに何かぶら下げることも可能。
ラゲッジスペース部分のホロは写真の様に跳ね上げることも可能なので、荷物を取り出すことにも一応配慮はされている。静粛性や防犯性を重視したいという人には、やはりハードトップの方がオススメ。価格や輸送費用は不明だが、まずは車両を購入して後からオプションのハードトップをオーダーするのもアリだろう。
LION HEART【ライオンハート】
TEL:0586-67-1711HP:https://www.lionheart2005.com/
PHOTO:浅井岳男
TEXT:空野稜
アメ車マガジン 2022年3月号掲載
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