スモールピックアップ『マーベリック』フォードが大きな期待を寄せる
2022 FORD MAVERICK
AMERICAN TRUCKS -ピックアップトラックの無限なる可能性-
2022 FORD MAVERICK ALL NEW MODEL
ハイブリッドモデルも設定
フォード・レンジャーよりもコンパクトなピックアップトラック、マーベリックが2022年に登場する。端的に言えば復活したブロンコのSUTモデル。フォードがマーベリックに対する期待は大きく、ハイブリッドモデルも設定し、グローバル展開を目指していく新世代モデルだ。
復活したブロンコのSUTがマーベリック
フォードがスモールピックアップトラック市場に参入した。その名もマーベリック。スモールといっても、これはフルサイズピックアップトラックのF-150、そしてミッドサイズピックアップのレンジャーに対する表現であり、ボディサイズは全長5072mm×全幅1839mm×全高1745mmと、それなりに大きい。ただし、日本でも最近人気のトヨタハイラックスが全長5340mm×全幅1855mm×全高1800mmと比べると、確かに少し小さい。
では、なぜこのタイミングでマーベリックといえば、それはブロンコが最新型として復活したからだ。端的に言えば、マーベリックはブロンコのSUT(スポーツユーティリティ トラック)なのだ。
SUTという発想は2000年代にアメリカで生まれた。90年代中盤にジープチェロキーやGMシボレータホ/サバーバンなどがSUVブームの火付け役となり、2000年代には欧州や日系メーカーのSUVシフトが加速。これと同時に、ピックアップトラックの乗用化が進み、日系メーカーでもトヨタタンドラ、日産タイタンなどフルサイズピックアップトラック市場参入が続いた。
そんな頃、SUVとピックアップトラックの「いいとこ取り」をするイメ―ジの商品企画として誕生したのがSUTだ。その筆頭は、ハマーH2 SUTであり、その流れでH3のSUTであるH3Tも登場した。また、キャデラックエスカレードEXT然り。日系ではフルサイズピックアップトラック向けのV8導入に最後まで踏み切れなかった、ホンダが導入したV6搭載のリッジラインがある。
ブロンコのSUTとしてマーベリック、という横転換を理解した上で、フォード全体の商品構成と新規事業戦略を俯瞰してみると、主力のFシリーズでは、F-150ライトニングでEV化し、カリフォルニア州での商用トラックを含めたZEV法強化に対応していく。一方で、レンジャーはもはやアメリカ市場向けにとどまらず、世界戦略トラックとしての需要が拡大している。日系メーカーの場合、新興国や中東向けと、北米向けでは異なるミッドサイズピックアップトラックを市場導入する手法とは違う。
そうなると、マーベリックはこれからどうなるのか? あくまでも私見だが、アメリカではレンジャーの市場を脅かすほどの需要が見込まれると思う。結局、商用や上質な乗用としてピックアップトラックを選ぶアメリカ人は、F-150を好む傾向が定着している。
一方のレンジャーで、フォードはアメリカ市場でのアウトドア感覚な需要も取り込もうとしてきたが、そうした観点では、やはり中途半場な商品戦略になってしまっていた。そこで、ハードユースに対応できる車体と足回りを徹底的に開発したブロンコのSUT化を考案した。むろん、ブロンコの商品企画が始まった時点でマーベリックが並行して開発されてきたからこそ、このタイミングでのマーベリック量産となっている。
ピックアップトラックを主力事業し、自他ともに認めるトラックカンパニーであるフォードとして、マーベリックは新規事業の「虎の子」だと言える。
マーベリックのパワートレインは2つ。ブロンコとも車体を共有するエスケープとの共通性が高い。2. 0ℓ直列4気筒ターボ(出力250hp)と8速AT。さらに、2.5ℓ直列4気筒ハイブリッド(合算出力191hp)とCVTの組合せだ。ハイブリッドでの燃費はアメリカEPA(連邦環境局)の規定計測で市街地40MPG(マイル パー ガロン)で、日本での燃費に換算するとリッターあたり16.9kmに相当する。フォードとしてはマーベリックを北米含めたグローバル展開するとなると、企業別平均燃費(CAFE)対応から2.5ℓハイブリッド車の販売強化に重点を置くことが考えられる。
TEXT/桃田健史
アメ車マガジン 2021年 9月号掲載
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