【キャデラックエスカレード】王者の進化 今なおプレミアムSUVのど真ん中
2021 CADILLAC ESCALADE
2021 CADILLAC ESCALADE
リンカーン・ナビゲーターを始め、北米市場には多くのプレミアムSUVがラインナップするが、アメリカのセレブ達に圧倒的な人気を誇るのがキャデラック・エスカレードだ。それ故、第5世代となる新型モデルの発表は大きな注目を集めた。ハイテクノロジーシステムを多く導入し、「王者」に相応しい「進化」を遂げた新生エスカレード。
セレブ御用達の王道はやはりキャデラックだ
2020年2月4日、新型エスカレードが世界披露された。場所は、南カリフォルニアのビバリーヒルズだ。 なぜ、ビバリーヒルズなのか?例年ならば、1月上旬に北米国際自動車ショー(デトロイトショー)があるが、2020年から開催時期が6月に移行した。そのため、GMとしてこのタイミングで発表するためには、キャデラック単独でのイベント実施が必要だった。そこで選ばれた地は、キャデラックが似合う町、実際にキャデラックの需要が高い町、世界屈指のセレブの町だったのだ。
世界が注目する中、記者会見の舞台に登場した新型エスカレードは、華麗な進化を遂げていた。より大きく、よりゴージャスに、よりハイテクを満載したアメリカンSUV最上級モデルとなった。
新型エスカレードのスペック詳細に触れる前に、まずはエスカレードを含むプレミアムSUV市場の現状から見ていこう。
アメ車ファンならば周知の通り、SUVが市民権を得たのは90年代後半から2000年代にかけてだ。80年代までのSUVは、フルサイズピックアップトラックのベッド(荷台)に樹脂製などのカバーをつけたモノの延長上、といった感じだった。それが90年代に入り、ジープ・チェロキー、フォード・エクスプローラー、GMシボレータホ/サーバーバンなどが、全世代に向けた日常用として定着するようになった。
そうしたSUV市場の広がりを受けて、ユーザーの間では「人とは違うこと」を求めるようになった。90年代後半になると、リンカーン・ナビゲーターと、キャデラック・エスカレードが登場したのだ。こうしたアメリカ発のSUV、さらにはプレミアムSUVのトレンドが、ジャーマン3(メルセデスベンツ、BMW、VWグループ)と日系プレミアム3(レクサス、アキュラ、インフィニティ)へ大きな影響を与えていく。
2010年代になると、ロールスロイス、ベントレー、ランボルギーニ、アストンマーチンなど超プレミアムやスーパーカーを扱うメーカーが、超プレミアムSUVを仕立てるようになる。 世界中の自動車メーカーがSUVに参入し、高級メーカーがこぞってプレミアムSUVの量産の進める中でも、エスカレードはプレミアムSUVのド真ん中として、セレブから圧倒的な信頼と支持を得ているのだ。だから、新型のワールドプレミアの地が、ビバリーヒルズなのだ。
NEW ESCALADE CHECK POINT
1. 自動車では初搭載の湾曲型「OLED ディスプレイ」
2. 36スピーカーを備えた「AKG スタジオ・リファレンス・オーディオシステム」
3. 「Duramax ディーゼルターボエンジン」を設定
4. ハンズフリー運転支援システム「スーパークルーズ」
OLEDディスプレイや自動運転システムなど最新装備が目白押し
プレミアムとは大型化?ボディサイズは更に大きく
改めて、新型エスカレードを詳しく見ていこう。 ボディサイズは先代に比べて拡大して、全長×全幅×全高=5382mm×2059mm×1948mm。ESVは、5766mm×2059mm×1942mmとなった。だが、パッと見た目では、より大きくなった印象はない。理由は、フロントマスクのデザインだ。ヘッドライト形状が先代の縦目から、切れ長の横目になった。XT6などが採用する最近のキャデラックアイコンに融合させた。
通常、横目にすると顔が引き締まるが、ボディ全体が小さく見える傾向になる。これに対して新型エスカレードではフロントバンパーとフロントグリルが一体化したような視覚効果によって、エスカレードの真骨頂である「強烈な押し出し感」を維持している。
次に、車内に入ると、全長増による空間の拡大を実感する。特に変わったのは3列目シートのレッグスペースだ。先代比40%増となった。さらに、3列目シートの後方にあたるカーゴスペースはなんと68%増となった。セレブが日常生活の中でエスカレードを使う際、高級スーパーでの買い物で「もっと荷物を積みたい」という声が多かったようだ。
ドライバーズシートに移ると、目の前には曲面を利用した世界初搭載の大型ディスプレイ「OLEDパネル」が目立つ。操作はタッチパネルのほか、通常のスイッチのようなフィジカルタッチをあえて残した。音響関連では自動車業界で標準装備として初として、欧州オーストリア創業のAKGブランドの36スピーカーを採用した。スタジオ3Dサラウンドと呼ばれる、車内空間の360度から臨場感ある音場を実現した。こうした多彩で高品質なインテリア装備こそ、セレブがクルマ選びのなかで最もこだわる点である。
ディーゼルエンジンを追加、自動運転も可能
次に、走りの進化を見ていきたい。サスペンションには、GMが2000年代から熟成してきたマグネティック・ライド・コントロール最新版を採用した。ショックアブソーバー内の液状流体の中に細かい導体を入れ、減衰力を短時間で変化させる方式だ。ここに、最新型のエアサスを組み合わせ、乗り心地とハンドリングの良さを融合させた。
エンジンは、GM伝統の6.2L V型8気筒(最大出力420hp、最大トルク63.5kg-m)と10速AT。さらに、注目されるのがエスカレート初採用となるディーゼルエンジン。3.0Lのデュラマックスをオプションで設定した。
運転支援システムも充実し、自動運転レベル2に相当するスーパークルーズを標準装備。また、夜間での運転支援としてナイトヴィジョンをオプション設定とした。生産は、これまで同じくテキサス州のアーリントン工場。プラットフォームを共有する、シボレータホ・サバーバン、GMCユーコンと同じ製造ラインで作業される。 発売時期は、アメリカでは2021年モデルとして2020年夏からディーラーの店頭に並ぶ。日本での発売時期については、GMジャパンから現時点で正式リリースはない。
現行となる第4世代のエスカレードと比べると、全長:187mm/全幅19mm/全高:38mm大きくなる(本国カタログ値)。グレードはラグジュアリー、プレミアム・ラグジュアリー、プレミアム・ラグジュアリー・プラチナム、スポーツ、スポーツ・プラチナムの5タイプ。
写真のホワイトボディのモデルが初設定のスポーツグレードで、グロスブラックメッシュグリルなど各所がブラック仕上げとなり、ダンパーの減衰率を瞬時に変更するマグネティックライドコントロールといった強化装備も追加。ラゲッジスペースは従来比で68%容量が増え、荷室容量は722?にもなるという。リアゲートのガラスハッチといった、使い勝手の良いシステムも取り入れている。
自動車では初搭載となる湾曲型OLEDディスプレイ
新型モデルの大きな注目となるのが、自動車では初搭載となる湾曲したOLEDディスプレイだ。4Kテレビの約2倍のピクセル密度を誇り、対角線比で38 インチ超となる。7.2インチのタッチ式ディスプレイ、14.2インチメーターディスプレイ、16.9インチのインフォテインメント用ディスプレイで構成される。ヘッドレストなど車内に36スピーカーを備えたAKG スタジオ・リファレンス・オーディオシステムを搭載。3Dサラウンドが楽しめ、前席・後席会話音響システムも搭載する。
もう一つのトピックが、ハンズフリー運転支援システム(高速道路)「スーパークルーズ」を標準搭載。ドライバー監視システム、カメラ、レーダーセンサーの装備に加え、ライダーマップデータと高精度GPSを活用し、アメリカとカナダの高速道路であれば、20万マイル以上の範囲で運転をアシストする。もし日本で正規販売が決まったとなれば、この機能が使えるようになるのか気になるところである。
【SPEC:エスカレード・ラグジュアリー 】 ●全長×全幅×全高:5382×2059×1948mm ●ホイールベース:3071mm ●エンジン種類:6.2L V8 ●最高出力:420hp/5600rpm ●最大トルク:63.5kg-m/4100rpm ●トランスミッション:10AT ●乗員:7人
TEXT /桃田健史
アメ車マガジン 2020年 6月号掲載
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